2007年9月25日火曜日

自然の力

妻の陣痛が始まってから、2日が過ぎても生まれてこない難産だった。


産道がしっかりと開ききらず、赤ちゃんの頭も大きいため、陣痛はあってもまだ出産には踏み切れない状態が続いたのだ。



2日目の夜に、1分おきごとの大きな陣痛が来て、皆、もうすぐ生まれるという期待感で一杯になった。痛みに苦しむ妻の背中をさすり、診断のときを待った。



診察室に連れて行かれたものの、残念ながらまだその時ではない事が告げられた。そして、3日目の昼まで待って産道が開ききらなければ帝王切開に踏み切ると告げられた。



「切るなら切るで早くなんとかしてほしい」と家族の誰もが思っていた。

耳の奥に残る妻の痛み苦しむ声が私の頭の中を何度も駆け巡っていた。



睡眠誘発剤と陣痛抑制剤を打ってもらい、妻は少し眠ることができたようだ。



3日目の朝、陣痛促進剤を打つ予定であったが、薬が切れるとともに強い陣痛が自然に始まった。

助産師さんたちも何人かそばについてくださり、万全の態勢で看護してくださった。正午までの時間が本当に長く感じられた。



とうとう正午が来た。診察を受けるとすぐに分娩室に運ばれた。もう赤ちゃんの頭が3分の1ほど見えていたそうだ。分娩室には10人近くの助産師さんたちが入れ替わり立ち代り様子を見に来てくれた。そして、ゆっくりと確実に赤ちゃんが外の世界へと生まれてきた。

娘の苦しむ姿を直視できなかった妻の母は、一旦家に帰り、病院に戻ることをためらっていた。正午になって足取り重く病室にやってきた。分娩準備室に私たちがいないことを知り、いよいよと覚悟を決めて分娩室に入ってきた。



「生まれてよかったね~」(泣)と半泣きの娘とその旦那を見て、やはり涙が溢れた。



後でわかったことだが、産道はやはり開ききっていなかったそうだ。だが、赤ちゃんの生命力で子宮経口を引き裂いて、自ら出てきたのだという。



自然の力は、本当にすごいと感じた。

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