2007年7月2日月曜日

ごまと銀メダル

 私は子供の頃から「ルパン三世」が好きである。そして、ルパンの絵であればすぐに、しかもかなり上手に描ける自信がある。ただし、ルパンのみで、次元や五右衛門、不二子ちゃん、銭形警部などのいわゆる脇役の絵はまったく描けない。子供の頃、必死に練習したのは、ルパンの絵だけであった。つまり、子供心には、ルパンという「ヒーロー」にあこがれ、脇役にはあまり眼が行き届かなかったと言える。
 ところが大人になって「ルパン」の面白さを考えてみると、その魅力はルパンを取り巻く名脇役たちにあるということに気づいた。ルパンを支える次元たちそれぞれのキャラクター、ルパンを捕まえることに躍起になる銭形警部。この名脇役たちは、それぞれ独自にルパンをも凌ぐ才能と実力を兼ね備えている。彼らがあってこそのルパンなのである。

 大学生のときの恩師がよく、「何事をするにしろ、金メダルではなく、銀メダルを目指してがんばるのが大切だ」とおっしゃっていた。オリンピックが近づくと、やれ金メダルだ、あの人は一番金メダルに近い、今年も金メダル最有力候補などと選手たちがもてはやされる。選手を叱咤激励する意味でも、国民をオリンピックという世界的行事に注目させるという意味でもそれはそれで効果があることなのであろうが、しかし、メダルだけが競技の目的ではないとも言える。オリンピックは「参加することに意味がある」と言われる所以であろう。
 私の大学時代の恩師が銀メダルを目指せといったのは、別にオリンピック選手になれと言っているわけではなく、「分相応の努力をしなさい」と言っているのだ。偉くなるため、ヒーローになるために努力するのではなく、自分自身の夢に向かって精進することにこそ意味があるということであろう。

 ごまを主食として食べる人はいないであろう。ごまはあくまでごまであり、食材の味を引き出す名脇役として食卓を飾るものである。

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